先日の会議にて、とある委員の方が「ドナー家族が苦しんでいることは以前から言われていた」というような発言を聞きました。
議論の中心は医療施設内での家族の支援についてになります。その議論が「どうすれば、ドナーの数が増えるのか」ということではなく、「どのように家族の支援をするか」とならなくてはなりません。そして、提供する権利も、提供しない権利も守られなければなりません。
たくさんの医療者の方々が、家族を支えようとしていること、そしてその体制整備がすすむ方向にあると感じます。
しかし、ドナー家族の支援が求められているのは、医療施設内だけではありません。医療施設を離れてからもずっと、ずっと支援は必要なのです。会議の中で委員の方がいったように「ドナー家族は苦しんでいる」のだと思います。
ドナーの数をひとりでも、多くしたいと思っている人たちは、ドナー家族が苦しんでいるという現実をご存知だったのでしょうか。知っていながら、何もせずに、ドナーを増やしたいと、増やさなければならないと言っているのでしょうか。
「臓器提供」というものに係ったこと経験は決して消えてなくなることはありません。臓器提供に関しての知識を十分に理解し、脳死に関すること、その病状、移植医療のしくみやシステム、社会的な認識、法律成立に関しての経緯、そのような諸々をすべて承諾して、「臓器提供」に同意をする人など、一人もいないでしょう。危機的な状況の中で、時間的な猶予のないまま、「これでいいんだ」と自分を信じ、医療従事者を信じ、「臓器提供に同意」するのでしょう。そして、「臓器提供」という、一つの経験を受け取る。
この臓器提供という経験は、その後、様々な場面で次々にいろんな感情を引き出してきます。「これでよかったのかという葛藤」であったり、「脳死」の問題であったり、「ドナー家族」という役割であったり、多少なりとも「こんなはずじゃなかった」と思うことがあるのではないでしょうか。それが、大きな問題とならないのは、「同意をしたのは自分自身だから」という「自己責任」だと思います。
「臓器提供に同意したのは私だから」そう言って、全てを一人で抱えているのでしょう。その思いを吐き出すことなく、心にとどめ、何でもないように暮らすことは本当に苦しいものでしょう。その思いを受け止められる選択肢が、家族の会であったり、そして医療機関であったり、県のコーディネーターであったりと、一つでも多くなることを願っています。
先日、テレビ新広島の取材を受けました。
移植医療に関するドキュメンタリー番組を作成されるとのことでした。臓器提供を待っている患者さんや医療従事者、さまざまな方を取材されてみえ、ドナー家族の声をきいてみたいと思われたそうです。
そして、知れば知るほど、移植医療の難しさを感じると話して見えました。
私は取材に不慣れで、初めてお会いする方に何をどう話していいのか、話していながら自分でも何を言っているのかわからなくなったりしてしまいました。ドナー家族としての経験、そして感じることを聞かれるままに、お答えさせていただきましたが、私自身も、改めて移植医療の難しさを感じました。
制作の皆さんが、移植医療をどのようにとらえ、そしてどのように伝えるのか、とても楽しみにしています。
放送予定日は、まだ決まっていませんので、またお知らせしたいと思います。
令和三年もあとわずかとなりました。
今年は、厚生労働省の厚生科学審議会疾病対策部会、臓器移植委員会に参加、また、参考人として発表しました。
また、日本臓器移植ネットワークの事業評価等に関する第三者事業評価委員会、ドナー家族ケア部会に参加しました。
そして、九月には日本移植学会にて登壇。とても緊張してしまいましたが、たくさんの人の支えもあり、なんとかやりきりました。そして、みなさまの発表を聴講し、とても有意義な時間となりました。
十一月には三重県院内コーディネーター会議にて、講演。現場で患者さんやご家族と向き合ってみえる方々の声はとても勉強になりました。とある救急医の方は「私達もこれでいいのかと、悩みながら迷いながら、患者さんの不本意の中の最善を家族と一緒に探すんだ」そのように話してみえたのが、とても心に残っています。
十二月には日本臓器移植ネットワーク主催の臓器提供について考えるコーディネートワークショップにて講演。コーディネーターのみなさまとお話させていただき、楽しかったです。
たくさんの方と知り合う機会を得て、たくさんの方がドナー家族の支援の必要性を感じてみえることを知りました。とても心強く、そして身の引き締まる思いがします。
私に様々な経験をさせてただきました方々に、この場を借りまして、心から感謝、申し上げます。ありがとうございます。
今年一年を振り返りまして、たくさんの学ぶ機会を得て、貴重な経験となりました。いろいろな思いを抱きながら、参加していましたが、思いを言葉にすることがとても難しく、勉強不足であり、力不足を痛感しました。
お役に立てるよう、精進していきたいと思います。
雪の大晦日となりました。
どうぞ、みなさま温かくおすごしくださいませ。
1999年医療系短大卒業、看護師として総合病院や社会福祉協議会などに勤務しながら、私生活では結婚、二児の母となる。 数年前に夫がドナーとなり、ドナー家族となる。通信制大学に編入し、学びを深め、社会の変化による悲嘆の癒しにくい現状、日本の移植医療、ドナー家族の現状を知り、臓器移植ドナー家族の会の設立に至る。