その他

臓器提供という経験

2022年03月3日その他,ブログ

先日の会議にて、とある委員の方が「ドナー家族が苦しんでいることは以前から言われていた」というような発言を聞きました。

議論の中心は医療施設内での家族の支援についてになります。その議論が「どうすれば、ドナーの数が増えるのか」ということではなく、「どのように家族の支援をするか」とならなくてはなりません。そして、提供する権利も、提供しない権利も守られなければなりません。

たくさんの医療者の方々が、家族を支えようとしていること、そしてその体制整備がすすむ方向にあると感じます。

しかし、ドナー家族の支援が求められているのは、医療施設内だけではありません。医療施設を離れてからもずっと、ずっと支援は必要なのです。会議の中で委員の方がいったように「ドナー家族は苦しんでいる」のだと思います。

ドナーの数をひとりでも、多くしたいと思っている人たちは、ドナー家族が苦しんでいるという現実をご存知だったのでしょうか。知っていながら、何もせずに、ドナーを増やしたいと、増やさなければならないと言っているのでしょうか。

 

 

「臓器提供」というものに係ったこと経験は決して消えてなくなることはありません。臓器提供に関しての知識を十分に理解し、脳死に関すること、その病状、移植医療のしくみやシステム、社会的な認識、法律成立に関しての経緯、そのような諸々をすべて承諾して、「臓器提供」に同意をする人など、一人もいないでしょう。危機的な状況の中で、時間的な猶予のないまま、「これでいいんだ」と自分を信じ、医療従事者を信じ、「臓器提供に同意」するのでしょう。そして、「臓器提供」という、一つの経験を受け取る。

この臓器提供という経験は、その後、様々な場面で次々にいろんな感情を引き出してきます。「これでよかったのかという葛藤」であったり、「脳死」の問題であったり、「ドナー家族」という役割であったり、多少なりとも「こんなはずじゃなかった」と思うことがあるのではないでしょうか。それが、大きな問題とならないのは、「同意をしたのは自分自身だから」という「自己責任」だと思います。

「臓器提供に同意したのは私だから」そう言って、全てを一人で抱えているのでしょう。その思いを吐き出すことなく、心にとどめ、何でもないように暮らすことは本当に苦しいものでしょう。その思いを受け止められる選択肢が、家族の会であったり、そして医療機関であったり、県のコーディネーターであったりと、一つでも多くなることを願っています。

年の瀬となりました

2021年12月31日その他,ブログ

令和三年もあとわずかとなりました。

今年は、厚生労働省の厚生科学審議会疾病対策部会、臓器移植委員会に参加、また、参考人として発表しました。

また、日本臓器移植ネットワークの事業評価等に関する第三者事業評価委員会、ドナー家族ケア部会に参加しました。

そして、九月には日本移植学会にて登壇。とても緊張してしまいましたが、たくさんの人の支えもあり、なんとかやりきりました。そして、みなさまの発表を聴講し、とても有意義な時間となりました。

十一月には三重県院内コーディネーター会議にて、講演。現場で患者さんやご家族と向き合ってみえる方々の声はとても勉強になりました。とある救急医の方は「私達もこれでいいのかと、悩みながら迷いながら、患者さんの不本意の中の最善を家族と一緒に探すんだ」そのように話してみえたのが、とても心に残っています。

十二月には日本臓器移植ネットワーク主催の臓器提供について考えるコーディネートワークショップにて講演。コーディネーターのみなさまとお話させていただき、楽しかったです。

たくさんの方と知り合う機会を得て、たくさんの方がドナー家族の支援の必要性を感じてみえることを知りました。とても心強く、そして身の引き締まる思いがします。

私に様々な経験をさせてただきました方々に、この場を借りまして、心から感謝、申し上げます。ありがとうございます。

今年一年を振り返りまして、たくさんの学ぶ機会を得て、貴重な経験となりました。いろいろな思いを抱きながら、参加していましたが、思いを言葉にすることがとても難しく、勉強不足であり、力不足を痛感しました。

お役に立てるよう、精進していきたいと思います。

 

雪の大晦日となりました。

どうぞ、みなさま温かくおすごしくださいませ。

日本移植学会

2021年10月3日その他,ブログ

令和3年9月19日に開催されました、日本移植学会にご招待いだたき、

特別セッション、「臓器提供家族からのメッセージ」お話させていただきました。

第一会場であり、とてもとても緊張しましたが、提供に至るその思い、その後の思いを話しました。会場の人はあまり多くはなく、新型コロナウイルス感染拡大のため、セッションはWeb配信されていました。お聞きの方はどんな感想をいだかれたのでしょうか。

学会で発表することはもちろん、学会に参加することも初めてで、右も左もわからないままに、いろいろな学術発表を拝聴しました。

移植医療は、本当に多様であり、見る角度によって全く異なる姿を見せると感じました。移植医、救急医、脳神経外科医、腎臓内科医、看護師、コーディネーター、そして、レシピエント、ドナー家族、そのどこから移植をみるのか、どれも間違っていない。どれも事実なのです。

移植医療をどのように見つめ、そしてどのようにとらえるのか、それはきっとその人それぞれであり、その人の倫理観、死生観、その人が経験してきた人生そのものに影響されるのでしょう。

いろいろなことを思い、そして考える機会となりとても有意義でした。また、移植医療はもっとよくなると信じられるいい機会となりました。

貴重な機会をいただいたこと、お世話になりましたたくさんの方に、この場をお借りしましてあらためて、感謝申し上げます。

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くすのきの会 代表米山 順子

くすのきの会 代表
米山 順子

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1999年医療系短大卒業、看護師として総合病院や社会福祉協議会などに勤務しながら、私生活では結婚、二児の母となる。 数年前に夫がドナーとなり、ドナー家族となる。通信制大学に編入し、学びを深め、社会の変化による悲嘆の癒しにくい現状、日本の移植医療、ドナー家族の現状を知り、臓器移植ドナー家族の会の設立に至る。

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