OPTING OUTの制度

2021年08月1日その他,ブログ

今日は、臓器提供の制度についてお話させていただこうと思います。

制度には大きく2つあり、一つは、アメリカ、ドイツ、イギリスのように本人が生前、臓器提供の意思表示をしていた場合、または家族が臓器提供に同意した場合に臓器提供が行われるOPTING INという制度、もう一つは、オーストリアやフランス、スペインなどの本人が生前、臓器提供に反対の意思を残さない限り、臓器提供をするものとみなすOPTING OUTという制度です。
人口の少ない国でもOPTING OUTの制度で取り組む国は、提供数が多くなる傾向があります。
なお、どちらの制度の場合も実際には家族の反対があれば臓器提供は行われません。

(上記、日本臓器移植ネットワークのホームページより抜粋)

 

先日、委員会にて「OPTING OUTの制度についてどう思うか」質問を受け、返答できませんでしたので、あらためて、お答えさせてただこうと思います。

とっさに「無理でしょ」と思いました。その理由を、明確にまとめることができませんでした。あらためて、じっくりと考えてみますと、不本意に提供してしまう家族が増えると感じました。

その理由として、日本の医療に、指摘される特徴として、医師のパターナリズムと、患者(家族)のお任せ思考があります。患者は自分から説明を求める、質問すると言った行動を必ずしもとらないことがあります、信頼していないと思われるのではないか、怒られるのではないかといった心理があると言われおり、また、素人が玄人(医師)に「おまかせ」することを良しとする文化的背景があります。

「YES」が前提の臓器提供の制度は、「臓器提供しなければならない」という理解となり、「NO」と思っていても、「NO」ということができない可能性があると思うからです。

 

また、

医療関係者、特に医師と、患者、患者家族のコミュニケーションは特殊です。

まず、知識、社会的地位など、力の不均衡があります。そして、論理的視点、医学的な論点で話す医師と、社会心理的視点、心情、感情的な論点で話す患者、家族とでは、視点が異なる点、そして、危機的状況で最適なコミュニケーションができない不安定な心理状態である点、時間も限られており、場所も制限されています。このような状況で、正しく理解し、納得して同意を得ることは、非常に難しいでしょう。

「臓器提供する機会がある」という選択肢の提示が「家族が拒否したら臓器提供しない」、「家族が提供を拒否したら臓器提供できない」という理解に転じてしまう危険性があると思うからです。

 

そして、脳死と思われる可能性があると言われるのは、私の場合5日でした。その5日の間に、状況を受け入れ、提供を決断するためには、医療スタッフのきめ細やかな対応が必要不可欠と思います。その対応があるからこそ、最期の時をどう過ごすのかを考えることができ、臓器提供という選択をすることができるのだと思います。

臓器提供ありき、の制度であれば、その終末期の対応を得られず、状況を受け入れることのないまま、医師に言われ、提供に至り、何かなんだかわからないうちに「提供していた」という危険があると思うのです。

 

臓器提供の決断は、家族がともに過ごした時間、交わした会話、その意思をより合わせて、決定されると私は思います。どちらの制度であっても、家族が望まない限り、提供には至らないのです。しかし、今の文化社会的背景を考えると、私はOPTING OUTの制度は、賛成できないと思うのです。

 

 

参考までに、抜粋させていただきました日本臓器移植ネットワークのホームページです

世界の臓器提供数(100万人当たりのドナー数)|日本臓器移植ネットワーク (jotnw.or.jp)

カテゴリー

アーカイブ

最近の投稿

profile

くすのきの会 代表米山 順子

くすのきの会 代表
米山 順子

twitter

1999年医療系短大卒業、看護師として総合病院や社会福祉協議会などに勤務しながら、私生活では結婚、二児の母となる。 数年前に夫がドナーとなり、ドナー家族となる。通信制大学に編入し、学びを深め、社会の変化による悲嘆の癒しにくい現状、日本の移植医療、ドナー家族の現状を知り、臓器移植ドナー家族の会の設立に至る。

このページの先頭へ戻る